第8章 008
鮫島が焦れているのは、その態度を見ただけで明らかだった。
鮫島だけじゃない、翔太郎も、そして健太も、態度にこそ出さないが、内心ではかなり焦っていた。
尤も、社長としての責任から焦れる鮫島と、一刻も早く報酬の確認をしたい二人とでは、理由は全く違うのだけど…
そんな中にいて、弁護士である成瀬は別として、大野は実に落ち着いている。
自分が誘拐された結果、ここにいるということを、全くもって理解していない様子だった。
それとも、元々の呑気な性格も起因しているのかもしれないが…
「さっきも言った通り、カードキーを複製することは、容易なことではありません。ましてや、磁気タイプの物や、ICチップ内蔵の物なら尚更です。普通にカードキーを紛失した場合、新たなカードキーが到着するまでには、凡そ1ヶ月程度かかることもありますから」
「そんなかかんだ? 良かったよ、普通の鍵で…」
翔太郎はホッと胸を撫で下ろした。
「では何故そんなに時間がかかるのか…。それは、磁気にしろICチップにしろ、カード自体に情報が記録されており、この情報は製造元…メーカーに依頼するしかないからなんです」
榎本は淡々とした口調で言うと、一息つくためか、ソファに腰を下ろし、コーヒーカップを手にした。