第8章 008
「確かにそう思われるかもしれません。ですがそれは間違った常識です」
榎本は四枚のカードを手に取ると、まるでトランプのカードのように、扇形に広げて見せた。
「まず、本物とそうでないカードには、決定的な違いがあります。分かりますか?」
扇形に広げたカードを、その場にいる全員に見えるよう、身体ごとクルリと回った。
「えっと…、ICチップが内蔵されてるかどうか…ってことですかねぇ…」
口を開いたのは、それまでずっと鼻を掘ったり、時には居眠りを繰り返していた大野だった。
「そうです。カードキーのタイプには、大きく分けて三つの種類があります。表面にバーコードが印字された物と磁気タイプの物、そしてこのホテルで使用されているICチップ内蔵型のタイプに分けられ、多くの場合は磁気タイプか、ICチップ内蔵タイプに分けられます」
「へ、へぇ…、そうなんだ…」
安アパートに住む翔太郎にとって、磁気やらICチップやらといった物はほぼ無縁のせいか、思わず声が漏れる。
「仮に複製するとしたら、恐らくバーコードタイプの物が一番手っ取り早いんですが、実際素人が本物そっくりに複製しようと思っても、中々簡単に出来ることではありません」
「そりゃそうだろ。そんな簡単に何枚も造られては困る」
腕を組んだ鮫島が、フンとばかりに鼻を鳴らした。