第1章 001
どれくらいの時間が経っただろう、先に沈黙を破ったのは健太の方だった。
「一つ…、いや二つだ」
ボソリ、と呟くように言った健太の言葉に、翔太郎は“何が?”とばかりに小首を傾げた。
「だからその…、俺が出す条件がのめるなら、協力してやっても良いって言ってんだよ」
「条件か…。一応聞いとこうかな♪」
“一応”と言ったのは、健太が出す条件がどんな内容であろうと、翔太郎はのむつもりでいたからだ。
尤も、元々幼馴染の二人だ。
お互いの考えてることは手に取る…までとはあかなくとも、ある程度は予想がつく。
当然、翔太郎には健太が出すであろう条件がなんなのか…、凡その予想はついているのだろう。
翔太郎はベンチにドカリと腰を下ろすと、すっかり諦めモードの健太の顔を見上げた。
早く言えとばかりに自分を見つめて来る翔太郎を見下ろし、健太は僅かに表情に力を込めると、
「まず一つ目…」
人差し指をピッと立て、翔太郎の目の前に突き出した。
「報酬は前払いで50万だ」
いくら主犯格(この場合、主犯格はメールの送り主と言うことになるのだろうが…)は別にいるとは言え、成功するしないは関係なく、人一人を誘拐しようと思えば、それなりのリスクを負うことになる。
リスクも半分なら、当然報酬も半分…と言う計算だ。