第1章 ❄️️ヒーローになりたい
❄❄❄
「さ…………」
『さ、さ………………』
「『寒い!!!』」
10分程で寒さのあまり中断せざるを得なくなった。この時期、北国の夜は冷凍庫なみだ。
『う~もっとやりたいけど手が限界だー』
「ふ~、いてぇ。今日は一段と冷えるな。」
は~緊張する、と手を擦り合わせていると、
それを見て父が優しく、零、と呼ぶ。
「大丈夫。今日まで沢山頑張ったべさ。実技試験、どんな内容かは分からないけど きっと上手くいくさ!」
『ん。ありがと、お父さん。』
雄英に行きたいと伝えてから、酪農の仕事の合間を縫っては 個性を使う練習を見てくれていた父。
『忙しい中、ありがとう。』
再度、礼の言葉を述べると、父は微笑む。
「零、お父さんとお母さんは、嬉しかったんだべさ。ヒーローは素晴らしい仕事だ。体を張って、人を守り、助ける、そりゃ危険もあるだろうし心配だけど、」
頭の上にぽん、と父の手が乗る。
「それでも嬉しかった。人の為に何かしたいって思えるお前を誇りに思った。お父さんもお母さんも、お前は立派なヒーローになると信じてるよ。」
ワシワシと頭を撫でられる。
『えへへ、えへへ。』
寒いけどあったかい。緊張がほぐれてゆく。
少々照れくさいが、嬉しい。心強い。
「さ!戻ろう。お母さんが待ってるべさ。それに寒い!」
あはは、と2人で笑いながら歩く。
『あ、お父さん、後で雪掻きお願いね!明日車が出せなかったら大変!』
「う、まじかよ~。へいへい、零の為だ、任せろ!!」
朝から振り続けていた雪は もうだいぶその数を減らしている。
もうすぐやみそうだ。