第8章 ❄️️ 入学前の時間
雄英高校、入学式の2日前。
春風に髪をなびかせ、1人の少女が校門をくぐる。
大きな校舎を通り過ぎ、敷地内の奥にある建物をを目指す。
実家からの通学が難しい生徒の為の学生寮だ。
(流石雄英、寮も立派…)
「こんにちは!ようこそ、雄英高校の女子寮へ!!」
建物へ足を踏み入れると、何人かの女子が笑顔で迎えてくれた。
『こんにちは。えっと…』
「部屋の案内と荷物の運び入れの手伝いは私達、2、3年生がやっているの。名前と科を教えてくれる?」
なるほど、なんと優しい。
『ヒーロー科の雪零です。よろしくお願いします。』
「はいはい!ヒーロー科の雪さんね~。部屋番号は602号室ね!」
机に向かって椅子に座り、受付のような仕事をしている生徒が確認を取る。
「じゃ、私が案内するね。」
最初に名前を聞かれた生徒が私の方を見て、ニコッと笑い、行こう!と進み始めた。
『ありがとうございます。』
素直に後ろをついて行く少女。
重たそうなダンボールや大きな家具をを運んでいる人達を避けながらエレベーターへ向かう。
❄❄❄
案内された602号室。
扉の横には既に 自分の名前が印刷された表札のようなものが設置されている。
(今日からここが、私の帰る場所…)
嬉しさで思わず顔がにやけてしまう。
扉の向かいには窓があり、少し先に校舎が見えている。
『私の、ヒーローアカデミア。』
じわじわと湧いてくる実感に胸を踊らせ、部屋の扉に向き直る。
ガチャ…
中に入りまだ何も無い部屋を見回し、左腕の時計を見ると まだ荷物が届く時間より早いようだった。
待っている間、母親に電話をかけようかと思いつくが、仕事中かと思い直す。
キャリーケースを隅に置き、リュックも下ろす。
『よし、私もお手伝いしよう!』
このそわそわした気持ちで待っているなんてできない!
体、動かそう。
そう思い至った少女は、すぐに部屋から出て行った。