第7章 ❄ 投影されるあの日
世界総人口の約8割が何らかの''特異体質''である超人社会となった現在。
事の始まりは中国 軽慶市
''発行する赤子が生まれた''というニュースだった。
以降 各地で【超常】は発見され
原因も判然としないまま 時は流れる。
それぞれの特異体質は【個性】と呼ばれるようになった。
【個性】は人それぞれで非常に多種多様であり、その仕組みや限界値など、解っていないことの方が多いという。
入試が終わって2日経つ。
暗い部屋で1人、考えにふける少女。
意識を失う前の記憶が少しずつ戻ってきていた。
(相澤先生は右腕部分が爆発したと言っていた。私の個性でそんな派手に壊すことなんて本当にできたのだろうか…)
………………どこかで聞いたことがある。
生き物は何らかの窮地に陥った時、
本来ならありえない程の爆発的な力を発揮することがある…
''父から受け継いだ方の個性''は【昇華】。ただし水分子にのみ。
そう教わったし、今までそれしかできなかった。
実技試験中は夢中で思考が正常ではなかったが、よくよく考えたら加湿器の中に残っていた水はほんのちょっとだったはず。
それを結晶に変えたとして、コードを突き刺すほどの強度を加えなければならないから、形成出来た結晶はそこまで多くはなかったはずだ。
あの時、定かではないが実力以上の力を発揮してロボットを壊すことが出来ていたのだとしたら…
もしかしたら、訓練すればもっと色んなことができるようになるのかもしれない。
その理屈で言えば、''母から受け継いだ方の個性''も…
『~~~っ!』
胸が高鳴る。
だが………
『いや、合格してなきゃ何も始まらないんだけどね…』
ぐでっと机にうつ伏せる。
『あの3人とも話したいなぁ…』