第18章 ❄️️ 名前
ゆっくりと目を開ける。
頭がぼーっとする。視界もぼやけている。今どこにいるのか、何をしていたのか、分からない。
何も聞こえない。
左右に広がっている手に、意識を向けてみる。
『冷たい。』
これは、雪だ。
そこで、今、自分は雪に仰向けに寝転がって、数センチ埋もれていることに気が付いた。そのせいで音が聞こえないのだろう。
(あれ?私、家の庭にいたんだっけ?)
少しづつ、思考がはっきりしてくる。
『ううん、この雪は違う。』
手で雪を握るとすぐに溶け、氷のように固くなる。これはベタ雪。
寒い土地の雪はもっと粉のようにサラサラだ。
だが、懐かしい温度。心地良い。
何かやらなくてはいけないことがあっただろうか。
頭痛がする。
少女は再び、目を瞑った。
すると暖かいものが両の目尻をつたう。
(私どうして…泣いてなんか……)
「おっ、いたぜ。」
片腕を引っ張り上げられる。
「何だ、寝てんのか?こんな時に。ハッ、呑気なガキだぜ。」
「女かァ?どーする、動かねぇぞ。うぉっ、結構可愛いじゃん。」
うっすら目を開けると、数人の男達に囲まれているのが分かったが、力が入らない。
「殺すのはもったいねぇな。よし、アジトに連れて帰ろうぜ。」
「いいねいいね、お楽しみって訳だ。」
「ラッキー!!」
そのまま担ぎあげられ、白い雪だけの地面が、動き始めた。
(………誰か………………助けて。)