第16章 ❄️ 風
うわ、と咄嗟に腕で顔を守った心操だが、見て、と。彼女が言ったのを思い出し、目を細めながら、ゆっくりと再度、空を見上げる。
「はは、すっげぇ。」
外から見ていた時とはまた違う景色。春光に反射しきらきらと輝く雪と、暖かい春色の桜が、円を描き舞う世界。その中心にいる。
心操の表情が明るくなったのを盗み見た雪は、満足そうに頬を緩め、宙を舞う雪はそのままに、槍から意識をはずす。すると槍は消え、風が緩み、止む。ひらひらと落ちてくる雪と桜をひとつずつ、手のひらに受け止めた雪は、ふぅ、と息を吐いて目を閉じた。
『私ね、自分ができるのは雪の結晶を作って動かすことだけだと思ってた。でも、なんだってできるのかもって気付いちゃったんだ。』
ふふ、と嬉しそうに笑う。
(いや…思い出した、のかな。)
先日見た父との幼い日の夢。
『しんそうって自分の個性、好きじゃないみたいだけど、』
閉じていた目を開けて、視線を合わせる。
『好きになってあげてね。自分のことも。』
❄❄❄
諦めてたはずだったのに。
諦めたく、ねぇ。
「てか、諦めてたらわざわざ雄英なんかに来る意味なかっよな。」
まずは、体育祭か。