第1章 おなじ眼をした馬と鹿
「いだだだだだ!オイコラ何すんねん市丸!ちっとは加減せぇや!」
スパァン!とても女の子にするとは思えないくらい強い力で頭を叩かれ、じわりとまた涙が浮かぶ。扱いの差。こんなに強く叩かなくたっていいのに。ぐ、と平子隊長の隊首羽織を掴む。見上げた。
「私にもちゃんと構ってくれな嫌や」
「……っ、ああもう!もう知らへんからな!ちょいこいつ借りてくで!」
顔を真っ赤にした平子隊長に身体を持ち上げられ、所謂お姫様抱っこというものをされる。構ってくれた。久しぶりのスキンシップだ。嬉しくて、へらりと笑う。目に溜めていた涙がぽろりと溢れた。瞬歩で連れて行かれた先は五番隊の隊首室。そっと降ろされても離れない私に、平子隊長が溜め息を吐く。面倒臭いと思われているのだろうか。じわり、涙が浮かぶ。
「……泣くなや」
「…隊長が悪い」
キッと睨み付けると、睨まれた彼は気まずそうな顔をする。
「なんでそない避けはるんです?」
「避けてへん」
「嘘ばっかり、」
憎いなら、憎いと言ってください。そう言うと、馬鹿を見るような目で見られる。かと思えば、その金糸のような髪をガシガシとかいて、また大きく溜め息を吐く。そうしたいのはこっちの方だ。
「よっしゃ、腹括ったわ。…確かにお前のこと避けてたわ、スマン」
「何でですの?」
憎しみをぶつけられる覚悟は、今の間にできている。彼から悪感情を持たれるのは辛いけれど、私はそれだけのことをしたのだ。涙をぐっとこらえようとしても、ハラハラと落ちてしまう。お酒なんて飲むべきではなかった。
「……お前、可愛すぎるねん」
「……は?」
意味がわからない。
「…俺の記憶ん中ではお前はまだガキや。こない大物に成長するて思わんやろ。慣れへんのや」
気まずそうに、顔を赤らめて平子隊長がそっぽを向く。これは照れているときの彼だ。…どこに照れる要素があるのだろうか?つまり、子どもだった時の私としかまともにふれあってきていないから、大人の私だと記憶と混同して慣れない、というだけの話では?
「…照れる要素あります?そこ」
「じゃかあしぃっ!なんや!今ので分かれへんのか!どんだけ鈍いんや!!」
「?」