第1章 おなじ眼をした馬と鹿
乱菊に誘われて飲み会に参加したのは間違いだったのかもしれない。酒には弱くないはずなのだが、久しぶりの飲酒である所為か早々に酔いが回って身体が熱い。思考回路ははっきりしているのに口から出る言葉は拙くなってしまう。周りでドンチャン騒ぐ副隊長ズと京楽隊長をボーッと見つめながら、ほとんど無意識に酒を喉へと流した。
「なんか悩みでもあんの?」
「……最近、何でか知らんけど平子隊長に避けられとる………」
あんたまた何かやらかしたんじゃないの?なんて言ってくる乱菊。冷たい。何もしてへんもん。言って、お猪口に酒を注ぐ。
避けられている。露骨に。私の姿が彼の視界に入ると、話しかけようとする前にそそくさと姿を消してしまう。五番隊に遊びに行くと、つい先ほどまで霊圧を感じていたのに、いつも決まってもぬけの殻。なんで、どうして。
「…やっぱ私のこと憎んではるんや」
こないだまで、普通にお喋りしてたのに。ここまで露骨に避けられるのは、もしかしたら、憎む対象である私が馴れ馴れしいのが気に食わなかったのかもしれない。
「それはないでしょ。平子隊長、あんたが総隊長の命令で藍染に付いてたって知ってるじゃない」
「ほんでも、任務でしたかじゃあしょうがないですね!てならへんやろ…」
百年とちょっとぶりに会えたのだから、もっと声が聞きたい。お話ししたい。一緒にいたい。でもそれは私だけで、彼は鬱陶しいのかもしれない。そう思うと、じんわり涙が浮かんでくる。涙腺が緩んで、視界がボヤけて鼻がツンとする。お酒の所為だ。
「ああほら愛美、泣かないの。平子隊長があんたを嫌うわけないじゃない。うん、ないない」
「…なんでそない言い切れるん」
「見てたら分かるわよ。あの人、あんたのこと---」
ふと、後ろから誰かに耳を塞がれる。ふわりと香るお日様の匂い、そして独特な香水の匂い。え、なんで。避けられているはずなのに。後ろを振り返ると、久しぶりに見たその人は何やら乱菊と会話中らしい。耳を塞がれているため何を話しているのかは聞こえない。少し隊長の顔が赤くなる。…面白くない。隊長も乱菊のおっぱいの虜か。ムカついて、耳を塞いでいるその手を思いっきり抓った。