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徒花まみれの心臓 ~ifストーリー~

第7章 息をしたまま死ね




教えることへの喜びを感じる。少し彼を誤解していたのかもしれないと自分を恥じた。教師としての彼は好きだ。けれど、一人の人間として接する彼が、私はどうにも苦手なのだろう。彼が黒板に向き合った瞬間を見て、早足でそこを通り過ぎる。準備室へ戻るとちょうど3時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。次の授業の準備を済ませ、屋上へ向かう。身体はだるい。頭も回らない。だけど煙草は吸いたい。そうして扉を開けて、先客の姿を見て後悔する。


「愛美」


煙を蒸しながら、藍染先生が私の名を呼ぶ。少し躊躇して、けれど煙草を吸いたくて屋上に出た。いつも通り、彼から少し距離を置いた場所で煙草を取り出す。そうすると、彼はいつも通り、私に歩み寄ってくるのだ。避ける気力もない。横目でその姿を捉えながら、ジッポで煙草に火を点けようとすると、藍染先生に煙草を奪われた。


「…何ですの」


睨み付ける。いつも微笑を浮かべている彼が、珍しく真顔だった。


「体調管理を怠るとは、君らしくないな」


藍染先生のことをとやかく言っているが、私も私で普段は常にヘラヘラ笑っている為か不気味に思われがちである。そんな私の些細な変化に気付けるのは、幼馴染である乱菊だけだった。何故彼にバレたのだろう。やはり怖い人だ。


「…それについては言い返す言葉もあらしまへんけど、生徒には隠し通せるから大丈夫です」



煙草を返せと伸ばした手を掴まれる。


「---困った子だ」


そうして、手を引かれたかと思うと、煙草と香水の混ざった藍染先生の香りに包まれる。唇を塞がれ、驚いて目を見開いた先に、私の目を見据える彼の瞳が映った。その近さに思わず目を瞑ると、唇を割って入ってきた舌が口内を犯す。送り込まれる唾液と、時折漏れる彼の吐息から、煙草の味がした。頭がクラクラする。フラリと揺れた私の身体を、彼が腰に手を回してしっかりと支える。されるがままだった。キスの合間に零れる自分の恥ずかしい声を聞きながら、ぼんやりとした思考で、彼の首に手を回そうとした。瞬間、4時間目の始まりを告げるチャイムが鳴る。ハッと目を見開き彼を押し退けると、彼は案外すんなりと拘束を解いてくれた。息を整えながら、扉へと足を進める。彼に何を言っていいのかもわからないし、何より授業に向かわなければならない。


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