第18章 別々の場所で
かかしサイド 続き
開けて入る家には彼女の匂いがまだ残っている。
キッチンを見ても、寝室にいってもそこには刻まれた彼女との思い出がよみがえる。
ただ‥‥リビングにいくと、そこは彼女と別れた最後の場面だけが何回でも蘇り、何度でも俺を苦しめた。
必ず連れ戻す…そう心に決めている。
それでもここに立つとどうしようもなく1人の男して
あいつを許せなくなる感情が爆発しそうになった。
そこから逃げるようにして
風呂にさっさと入り寝室へいく。
俺の安定剤となるのは彼女の匂いと思い出がまだ残るこの布団の中が1番だ。
俺が仰向けになってイチャイチャパラダイスを読んでいると、マリは決まってトントンと俺の左胸のあたりを叩いてくる。
その合図に俺は気づき、読んでいた本から一旦目をはなして左腕を上げる。
するとマリは笑って俺の左肩から左胸にかけて頭をのせて、まるで俺を抱き枕のように抱えくっついてくる。
そして俺はマリを左腕で抱えながら本の続きを読むのだ。
彼女は何も話さない。俺にくっついてそのまま俺の鼓動を聞きながらぼんやり過ごしそして眠るのだ。
彼女なりに俺の読書を邪魔したくない、でも俺にはくっついていたいというもとに考え出された行動なのだろう。
それがまた愛しかった。
だんだん読書に疲れていく俺は、結果的にそのままマリを左わきに抱えながら眠るのだ。
これが俺達の寝室での当たり前になっていた習慣だった。
いまはここにはその体温も重みさえも感じることができない。
それでもまだ残る彼女の匂いと思い出の中で
俺は眠りについた_____