第3章 お面1枚分の壁
狐のお面の男サイド 続き
こっちを見たその子は、マスクで目元しか見えなかったけど恐怖をあらわにして走り出した。
別にほっておいてもよかったんだけど、あんなこと思っている子を自分と少し何かが似ていると思ってしまったのか、瞬身で追いかけていた。
追いついて目の間に立つ俺に、あきらめたのか好きにしてくださいという彼女はちょっと面白い。
ほんと、いったい俺をなんだと思ってんのよ。
ウルシのおかげで、どうやら俺はお化けでも、そこまで悪い奴だとは誤解されることもなく、こうしてなぜか彼女に合わせて一緒に歩いている。
もう任務も終わって帰るだけだったし、里までは少し距離もあるから野宿でもしてゆっくりかえるかとも思っていたから、別にいいんだけど。
気になったのは、彼女がこの道に呼ばれている気がしたというセリフ。
見た格好からして里のものじゃない。
いくつかの里をしっているけど、そこでも見たことないのだ。
俺はお面をしてるし、彼女もマスクをしているから素顔がはっきりわからないけど、いくら悩んでもこれまで見かけた記憶はやっぱりない。
同じ世界のものじゃない…
なぜだかそんなバカげた仮説がうかんだ。