第3章 お面1枚分の壁
狐のお面の人サイド 続き
火の神様のまつられた神社に行きたいという彼女に付き添う。
瞬身でいけばまぁわりかし早いけど、そんなの知らないといった反応をした彼女は、今俺の隣でちょっと息を荒げながら歩いている。
道のりはそこまで甘くない。
「ほんとにこのまま歩いていくつもり?」
彼女の顔をみおろしそう聞いてみる。
だって坂道とかで呼吸も上がってるし。
「あと、どのくらい…ですかね…?」
「このままいけば、1時間は余裕でかかるんじゃない?」
「!?…も…それじゃ無理だ…あつ…」
そういって彼女はマスクをはずした。
「ごめんなさい。何も知らなくて、付き合わせてしまって…」
そう困ったように笑う彼女は、ぷっくりとした唇が印象的な愛嬌のあるかわいらしい子だった。
見えなかったものが見えると、印象もだいぶ違う。
この子が、あんな儚く一人嘆いていたなんて…
その笑顔と、あの儚く夜空を見上げていたギャップが、少し俺の鼓動をはやめた。
「いや…俺は別に。マリ、なんでマスクしてたの?…してないほうが、いんじゃない?」
「そう…かな。なんか花粉とかアレルギーあって、くしゃみとかでちゃうしやってただけで。でもあなたこそ…あ、あの、名前…」
「かかしっていうんだよ、俺達、忍犬の契約者なわけ」
そういってウルシが口を横から出す。
「かかしくん…いやかかしさん…」
「かかしでいいよ」
「じゃかかし」
そういってまた彼女は笑う。
俺はもう瞬身でいこうと提案しようと思ったけど、なんだか、素顔を見た彼女ともう少し一緒に歩いてもいいんじゃないかと思えた。
だから、彼女の呼吸が少し乱れていたけど、もう少しだけ…とその提案を口にださず飲み込んだ。