第3章 お面1枚分の壁
狐のお面の人サイド
ウルシが全然帰ってこない。
他の忍犬たちと俺は待ちぼうけをしていたが、結局任務後の疲労もあってほかの子達は先に帰らせた。
あとでお説教してやんないと…
そう思いながらウルシを待つ。
ポンっとようやくあらわれたウルシに説教をしようとしたところ、迷子の女にあってどーのこーのと言い訳をされる。
もう少しましな言い訳はなかったもんか?
と半分あきれながら、ウルシに引きずられ匂いのもとになっている女のもとへ向かう。
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見えるのは、キャップを被ったマスクをして顔がわからない女の子。
あ、ウルシのいうこと、ほんとだったんだ…
ちょっと疑ったことを申し訳ないと反省する。
その子は、夜空を見上げて
「世界に私は1人だけって感じか…」
「何がしたかったんだろ…どこにいきたかったんだろ…
私は誰にいてほしくて、誰と歩みたかったんだろ…
何を見て、何を感じて、何を思って、何を手にしたかったんだろうね…」
と独り言をつぶやいていた。
俺はわりと耳もいい。
それに鼻も。
言葉からも、彼女からも‥なんだか俺と同じような感覚と匂いがする。
それにその表情と姿は切なく儚い、その一言に限る。
俺の心も似たような気持ちを持ち合わせていたから
なにか胸にグッとくるものがあった。
俺は俺で、自分の存在価値がわからない___
何がしたかったんだろ/俺がしてきたことは
どこにいきたかったんだろ/ここにまだいるということは
誰にいてほしくて/でもいてほしい人達はもういなくて
誰と歩みたかったんだろ/歩みたかった仲間ももういない
何を見て/さらに悲劇や地獄を見て
何を感じて/罪を感じ
何を思って/また後悔と自責の念を思い
何を手にしたかったんだろ/俺がこの先手にするものは…
何もない…
世界に私は1人だけって感じか/俺にはもう…誰もいない
俺も一人だ___