第16章 心のないプロポーズ
マリサイド
今日はかかしが帰ってくるって連絡をくれた。
ちょっと立て込んでたから1週間半ほど会えてなかった。
長かったな~早く帰りたい。
私は里の住人が扱うお店にお手伝いに行っていて、夕暮れの中そんなことを考えながら走っていた。
「マリ」
そう呼び止められて振り向くと、トネリが後ろに立っていた。
「あ、トネリ!ごめんね、今日はすぐ帰らなきゃならないんだ!」
それだけ言って、またねっていうつもりが
彼の言葉で足が止まった。
「今日は6代目火影が帰ってくるから?」
「え………うん…」
トネリとは数回あったけど、いつも具体的な話をする前に彼は消えてしまっていたから、かかしとのことはまだ何も話してなかった。
まぁ、里の住人ならわたしとかかしが一緒にいることはなんとなくじんわり知れ渡っていたから、知っていてもおかしくはないと思ったけど…
なんだか…なんか…あんまりいい気がしなかった。
「マリと六代目ってまだ結婚してないよね?」
「え!…結婚は、してないよ」
「そう、よかった。マリはさ、僕と結婚するからさ。
もう君たちが結婚してたらどうしようかと思ったよ」
サラリと訳のわからないことを言われて混乱する。
「冗談…だよね?わたしが…トネリと?」
両目を閉じて薄く笑っているその何にも動じない笑顔がだんだん恐くなる。
「そう、僕は本気だよ、マリ。君は僕と結婚するんだ。
僕と一緒に来てもらう」
「え‥ご、ごめんッ」
そういって私は走り出した。