第2章 ビビりの迷子としゃべる犬、そして狐の面の男
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ここまでくればあいつと離れただろう…
肩で息をしている呼吸をなんとか落ち着かせる。
が、顔をあげて私は絶句することになる___
すでに目の前には狐の面をした奴が立っているからだ。
もう、もうここまで来たらこっちも従うしかない。
逃げられない‥
「もぅ…好きなようにしてください」
相手がお化けか妖怪ならあきらめは肝心だ。
あきらめた。
「お前、なに言ってんだ?」
聞き覚えのある声に、目を向ける
「ウルシ!?」
「ウルシ、この人がさっき言ってた人?」
その狐の面の人がウルシに問いかける。
「そぉ。俺さぼってたわけじゃないよ?ほんとにこいつといたんだよ。なんかどっから来たか知らないけど。マリっていうんだ」
ウルシ~ご主人様に私のこと伝えに行ってくれてたん?
このご主人の面の趣味もどうかと思うけど、ウルシ、めっちゃ優しいやん…
おどおどしながらも、ウルシのしてくれたことに感謝しながら訪ねる。
「あの、ウルシの飼い主さん…ですか?」
「あー、ま、そうなるね。マリ…だっけ?」
「は、はい」
「ウルシが言いに来たんだよ。なんか迷子みたいな女がいるって」
「私…ですね、まさしくその女っていうのは‥」
「とりあえず、ここはあんまり場所的に微妙だから、ちょっと移動するよ」
「あ、はい!こっちですかね?」
そういって、私は指さされた方角へ歩き出す。
「え?歩いていくつもり?」
「え?走りますか?」
「いや、飛ぶ」
「飛ぶ!?その選択肢は私にはなかったですけど」
へへっとかみ合わない会話に苦笑いしてごまかす。
飛ぶって、飛ぶ?飛べないよ私。人間だし。