第9章 約束と縛り
マリサイド 続き
見上げたかかしは目を細めて笑った。
「マリ、それまで元気でね」
「もぅ…かかしはお気楽だなぁ」
そういって2人見つめ合う。
また会える、そうかかしも言ってる。
泣くな‥たった1年なんてすぐだよ。
大変なのはかかしのほうなのに。
私が泣いてる場合じゃない。
結局涙をまた流す私に
かかしは困ったように眉をさげて笑う。
「ちゃんと俺を待っててね、マリ」
そういってそっとキスしてくれた。
少しずつ私から離れていくかかしの体温。
体、そして手、指先…
そして彼に背を向けると、とてつもなく恐くなった。
階段を上る足が恐くてすすまない。
ほんとに今ここで離れてもいいの?
いや、ここにいて私に何ができる?
ただの足手まといでしかない。
でも覚悟を決めた足は
やっぱりその覚悟を簡単にすてさり、
こうして足が地面にへばりついたままだ。
離れたくない_____
「マリ、俺達ちゃんと繋がってるよ。
またここで会えるから」
「!」
背中から
暖かい風とともにかかしの声が私を抱きしめた___
そうだ、私の中に、そしてかかしの中に刻んだ深い繋がり。ちゃんと覚えてる。大丈夫、また会える。
必ず____
顔を上げて
「うん」
そう一言振り返って
こぼれる涙もそのままに笑顔でかかしに答えた。
かかしは切なく、儚く、そして優しく瞳を揺らして
私をみていてくれた。
私は階段を振り返らず上り、自分の世界へと帰った。