第7章 再会
かかしサイド 続き
でも、俺はあの時のマリの言葉を忘れてない。
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『かかしがそのお面を外さないなら、私がどれだけかかしのことをこれから知っても、そのお面一枚分の壁は崩せない、その1枚分かかしのことを最後まで知ることはできないってこと。かかしとの距離はゼロにならない』
『かかしが、私との距離をゼロにしたいと思って、自らその壁を取ってくれなきゃ意味ないじゃない。私からは無理やり取れないよ』
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もしマリも覚えていてくれてるなら
俺があの時狐のお面をした奴だってことはわかるはずだ。
俺はマリからそっとお面を取った。
幼少期、暗部時代とたくさんのものを失い、奪ってきた。
走り続けてきた自分自身を振り返るように思い出し
お面を顔にはめ、お面越しに彼女を見つめる。
「お面1枚分の壁…」
そのセリフにまた大きく反応し瞳を揺らす彼女をみて
静かにお面をはずしていく。
「もう、マリとの間に壁はいらないよね」
俺はお面をはずしたあと、つけていたマスクもゆっくりとおろし、額当てを持ち上げ左目も開眼し両目で見つめる。
「マリ、これが本当の俺、かかし」
俺は今、すべてを君の前にさらけだすよ。
5年前にはできなかった。
心の奥にあった後悔を、ここで今ゼロにする。
俺のことをわかってもらうには
たくさんのことを話さなければならない。
でも俺を包み隠さず見てもらうことは、その第一歩___
俺の名を呼んでとめどなく零れ落ちるマリの涙を見て
彼女が俺をちゃんと認識してくれていることに
片思いが実った少年のようなくすぐったくもうれしい気持ちと、あの頃よりも大人になった俺にはっきりと芽生えた愛しさを感じた。
あの時は手を繋ぐことさえ歯がゆく、すごく緊張した。
今だって大人になったはずなのに、また緊張してる。
でももう我慢ができなかった。
泣いている彼女をグッと抱き寄せて自分の胸へとうずめる。
最後に会った時に比べて彼女は小さくなっていた。
いや俺の背が伸びたのか。
俺の胸の中にいる子は前よりも随分と綺麗な大人の女性となっていて、5年もの年月をより実感した。
ま、恐がりなとこは変わってないけどね…