• テキストサイズ

ここで君ともう一度

第7章 再会


マリサイド 続き

完全にまとまらない思考を遮るように
その男が近寄ってきて
私の持っているお面を私の手からそっと取った。


そしてその男は少しお面を感慨深く眺めたあと
みずからそのお面をつけて私に言った。


「お面1枚分の壁…」

「!」


驚く私をお面越しに見た彼は
静かにそのお面をはずしていく。



「もう、マリとの間に壁はいらないよね」



そう笑ってお面をはずしたあと
つけていたマスクもゆっくりとおろし
額当てを持ち上げた。


まっすぐな傷が縦に入った左目を開いて、鮮やかで真っ赤なオッドアイの目で見つめられた。



「マリ、これが本当の俺、かかし」



____________

『かかしが、私との距離をゼロにしたいと思って、自らその壁を取ってくれなきゃ意味ないじゃない。私からは無理やり取れないよ』

____________


自分がかかしに言った言葉が鮮明によみがえった。



「…かかし……」



彼は私が言っていた言葉を、5年も前に話したたわいもない会話の一部を覚えていてくれた。



私も言わなきゃならないことがあった
聞かなきゃならないことがあった


あったはずなのに…


乾いてしまっていた心は、いっきに満たされ
言いたいことも言えず、代わりに涙だけがいくつも落ちて行った____


/ 126ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp