第7章 再会
マリサイド 続き
完全にまとまらない思考を遮るように
その男が近寄ってきて
私の持っているお面を私の手からそっと取った。
そしてその男は少しお面を感慨深く眺めたあと
みずからそのお面をつけて私に言った。
「お面1枚分の壁…」
「!」
驚く私をお面越しに見た彼は
静かにそのお面をはずしていく。
「もう、マリとの間に壁はいらないよね」
そう笑ってお面をはずしたあと
つけていたマスクもゆっくりとおろし
額当てを持ち上げた。
まっすぐな傷が縦に入った左目を開いて、鮮やかで真っ赤なオッドアイの目で見つめられた。
「マリ、これが本当の俺、かかし」
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『かかしが、私との距離をゼロにしたいと思って、自らその壁を取ってくれなきゃ意味ないじゃない。私からは無理やり取れないよ』
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自分がかかしに言った言葉が鮮明によみがえった。
「…かかし……」
彼は私が言っていた言葉を、5年も前に話したたわいもない会話の一部を覚えていてくれた。
私も言わなきゃならないことがあった
聞かなきゃならないことがあった
あったはずなのに…
乾いてしまっていた心は、いっきに満たされ
言いたいことも言えず、代わりに涙だけがいくつも落ちて行った____