第6章 すれ違う心
マリサイド
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あれから季節はいくつも周り、それなりに仕事もして違和感を感じていた自分の世界になんとなくでもなじめるようになってきた。
いや、なじまざるを得なかった。
周りは恋愛話に浮かれている中、興味を示さない私を見かねて、最近友達から年下の男の子を紹介された。
あまり気が進まないけど
「遊んでみるだけでもいいって」
と半ば強引にすすめられ会っている人がいる。
今日は中秋の名月とも呼ばれる月夜の綺麗な満月の日。
満月を見に行こうと誘われ、気乗りしない気持ちをかかえながらも断り切れず、その人の車に乗り込んだ。
こーいう風にはっきりとできない自分が嫌だ…
そんなことを思いながら、車の中で揺られる。
少し歩けば見晴らしもいい場所にでるからといって、連れてこられた場所に降り立つ。
そして少し山道をあるき開けた場所へとむかった。
もうすでに満月のせいで辺りは一面明るく
いつもの夜とは感じられない。
まるであの時と同じだ…
少しずつ蘇る心の奥底にある記憶。
「ここから階段になってて、ちょっと危ないから。手かして」
そういって、なかなか差し出せない私の手を彼はあっさりと握りしめて歩き出した。
何か違う…
心にそうはっきり感じた。
私がこの手に求めたもの…
隣にいてほしい人に求めたもの…
それは…
初めて会ったのにしばらくすれば心は浮かれ
大きな安心感がそこにあって
大きな手は少しの緊張と優しさと、ぬくもりがあって
素顔はわからなくても、なぜか心惹かれて…
思い出すのは
あの短くも月夜の下一緒に過ごした、かかしだった___