第1章 ビビりの迷子としゃべる犬
待ってと言う気持ちとともに、ついつい前に出てしまった右手を虚しく元に戻す。
思わず強がってしまったけど、ウルシだって悪い。
いや、我慢してでも引き留めるべきだった。
また1人‥‥
見上げた空は雲一つなくて、月は変わらず綺麗で、立ち尽くす私の道を照らしてくれていて…
この道でいいよって案内してくれているようだった。
その先に何があるのかもわからないのに、導かれたようにその道をトボトボと歩き出す。
どこかもわからない、この世界。
あきらかにわかるのは、途中から自分の知っている場所でも、自分の世界でもない感覚を感じていたこと。
でも、実は少し前の自分が、ちょっと望んでいたことでもある。