第1章 ビビりの迷子としゃべる犬
「お前、俺がしゃべったからってなんだ?失礼なやつだな」
「‥‥」
「おい、聞いてんのか?」
「‥‥」
「おーい」
「‥‥」
「おーーーーーーー「だー!わかった!話せばいんでしょ!?何何なーーーにーーー!??」
無視して現実逃避をしてみたけど、ダメだった…
「うるさい奴だな、お前。お前こそ、名乗れよ」
な、、、犬のくせに、随分と言い方も上からだ。
「…マリ……」
「ふーん。お前さ、なんか見たことない格好だな。それにどこの里出身だ?」
名前聞いたわりに、お前っていうんかい。
名乗った意味ないじゃん。
それに里って、里…?
「んー、日本て里。いや、国。いや地元は京都って…里?え?もはや里って何?」
「はぁ?お前の言ってること、ほんとにわかんねぇ。
もういい。俺、はぐれたみんなのとこに戻らなきゃ」
あきれたウルシは毛をバサバサと震わせて私に背を向けた。
「えぇ!?待って待って!この状況で置いていくとか無責任すぎる!いかないで!」
「お前なー、俺には関係ないだろ?どっからきたかも知らない奴に」
「だって、夜だよ?森の中で女の子1人、あんたこそなんとも思わないの!?」
「なんだ、お前、俺にはウルシって名前があるっていったろ!?」
「あんたこそ、私が名乗ってもおかまいなしのくせに!」
「あ、そんなこというんだ?俺、行っちゃうからね?」
「…行きたいなら、行っちゃえばいいじゃん!知らない!」
「じゃ俺も知らない。じゃあな」
そういって、ウルシはピョンっと草むらへ消えていった。