第21章 結婚式
マリサイド
出て行った火影室のドアの隙間からかかしをもう一度のぞいてみてみると、火影の机にゴロンとふせて物思いにふけっているようだった。
かかしにとって素顔をさらすことはそこまで大きな決断となるのか…
ウニャウニャと悩んでいる様子をみていると、あの盛大に行われる式で逆にさらし者になって本人が嫌な思いをするのではないかと思い始めた。
せっかくの結婚式だしかかしにも楽しんでほしい。
「なんか…罪悪感湧いてきた…」
頭をワシャワシャと掻いているかかしを見ているとだんだん不憫になってきた。
「パパ悩んでるよ…すごく…ママは悪いこといったかなぁ?」
ポッコリ出てきたお腹をさすりながらつぶやいた。
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夜、まだ火影室で仕事をしているかかしのもとにそっと訪れる。
「あれ?どしたの?」
「ん…あのさ…」
「とにかくこっち来て座って。さすがに家にいると思ったけど、忘れ物?」
ソファに座らせてくれて、ひざ掛けをかけてくれる。
優しい旦那様だ。
「お昼はちょっと言い過ぎたっていうか、ごめんね。結婚式はね、やっぱり大切な思い出になるからお互いに気持ちいい形で過ごしたいからね、もしかかしが大勢の前で素顔を出すことにあまりいい気がしないなら、わたしはマスクつけたままでもいいから」
「マリ…」
「私はもういつだってかかしの素顔は見れる特権はもってるんだし」
そういうとかかしはありがとうって言って笑ってくれた。
そうだ、私にはもうその素顔を独り占めできる特権をもってて、しかもかかしと共に人生を歩めるなんてもう十分贅沢なんだ。