第3章 お面1枚分の壁
狐のお面の人サイド 続き
「かかしは、そのお面、とらないの?気持ちいいよ、外したらきっと」
名前を呼び捨てにすることで、親近感も湧いたのか彼女は敬語で話すのをやめた。
にしても、基本的にこのお面は取らない。
暗部は狙われることもあるから素顔をさらすことはめったにしない。
「んー…ちょっとね、めったに人の前でははずさないんだよ、てかはずせないというか」
「苦しくないの?」
そういって俺の正面に立ってじっと見上げてくる。
ジー…っと。
「‥…」
「外せないなら、残念。それとっちゃえば、かかしとの壁もなくなる気がしたのにな」
「壁…?」
「ふふ。かかしがそのお面を外さないなら、私がどれだけかかしのことをこれから知っても、そのお面一枚分の壁は崩せない、その1枚分かかしのことを最後まで知ることはできないってこと。かかしとの距離はゼロにならない」
「…!…」
すごくまともなことを言われた気がして、なにも言い返せれなかった。
確かに俺はこうして自らを隠して生きている。
それは暗部として隠さなければならない理由がある。
でも隠している自分にも少し安心感もある。
それと同時に、誰にもすべてをさらけだせないという気持ちもある。
どれだけわかりあっても、確かにこれ1枚分壁を俺は作っているのか…
仮面をはずしても、マスクを普段からつけている俺にとったら、まさにその言葉は適格だった。