【鬼灯の冷徹】あの世の行い気をつけて【トリップ長編】
第6章 初めてのお使い~桃源郷編~

がやがやと騒がしく賑わっている食堂に入れば今日もとてもいい香りで。
ここ地獄は福利厚生が実に充実していて食堂で食べる社食?は給料天引きなのか特に食券を買い求めたりする必要もなく声をかけてメニューを伝えれば作ってもらえる。
「オレ決めた、今日はマーボー豆腐丼の生卵のせにする!」
そう言って茄子はあっという間に注文しに行ってしまう。共に過ごすようになってから知ったのだけど茄子はたまに独自のセンスで料理にトッピングを足すのだけど、そのセンスがなかなか独特だ。けれど彼の言う通りの物を食べると何故かとても美味しいのだ。
「ちょ、…また席取らないで先行って。あのボケ茄子。」
「まぁまぁ。私たちも列に並んで注文しましょう。多分何時もの通りなら…」
唐瓜くんは今日もまた茄子くんを止められなかった事について小言をこぼしている。確かにお昼時の食堂はとても混んでいる。席が開くのを待ってる訳にもいかないから二人で注文口の最後尾へと向かう。
普通なら三人そろって座れそうな所なんて見つからない、と思うのだが…
「葎華、唐瓜こっちに席空いてる所があるよー。」
ほかほか湯気の立つ料理を持って今日も彼は手を掲げ腕を振る。どうやら彼の意外な事を発見する能力?は席の空き具合を察知する事にもたけているらしく彼らと行動を共にするようになってからいまだ一度も関取で苦労した事はない。
のだが
「だからそうやって手を振ると目立つって何度も言ってるだろうが!」
恥ずかしがり屋の唐瓜くんはそれがお気に召さないようだ。確かに恥ずかしいけど席が見つからないで右往左往するよりはいいと思って私はそのままにしている。
内心ニヤニヤしながら小動物系子鬼の愉快なコントを眺めていれば私の番が来ていたのか厨房の中から声をかけられた。
今日は卵の気分なんだよな。でも思いつくものは此処に来てからだいたい食べちゃったし…どうしよう
そう悩んでいれば背後にから
「悩んでいるようなら先に失礼しますよ。すみません、天ぷら定食をお願いします。」
と綺麗なバリトンボイスが聞こえてきました。思わず後ろを振り向けば鬼灯様が背後に立っているではないですか。
お腹を空かせてるのか心なし目つきがキツイです、はい。
「親子丼をお願いします。」
「お、俺も親子丼で良いです。少し固めで。」
唐瓜くんと目を差し合わせてとっとと注文しその場から動きました。
