【鬼灯の冷徹】あの世の行い気をつけて【トリップ長編】
第6章 初めてのお使い~桃源郷編~
「ねぇ、これってさ『増毛』した人はどうなるのかな?」
「は?いや葎華何考えてんだよ。そんなことより掃除しないと…」
「はいはい、オレは三途の川を渡る時に水に流されてると思う!」
「…なるほぞ、じゃあ川を渡った後の一部の亡者はハゲてる可能性もある、と。」
元気よく手を挙げながら発言する茄子のその言葉を聞き天を仰ぐ唐瓜。茄子の言葉に動かされた私は好奇心の赴くまま川を渡る亡者の姿をガン見する。
「うーん・・・見た所川を渡ってハゲる亡者は見渡りませんね。…川渡る時に必死にズラを守る亡者は見えますけど」
「何やってるんですか。そんな所を見てないでとっとと仕事なさい。」
「ひゃあ?!!」
後ろから音もなく表れた鬼灯様に思わず悲鳴をあげてしまった。思わず握っていたゴミ袋を落とせば同じく河原を観察していた茄子と唐瓜がこちらを向き、アッと驚きた表情を見せる
「すみません鬼灯様!ほら、お前たちが遊んでばっかいるから。」
「でもさ唐瓜もゴミ袋膨らんでないじゃん。」
「な、お前なんかゴミを一か所に集めただけだろ!」
言い合いを始めた二人を一瞥して
「口は良いから手を動かして下さい。もうお昼時ですよ。…午前の作業は此処までで良いので、午後こそはしっかり頑張ってくださいね。」
懐中時計を見ながら鬼灯様が休憩を伝えてくれる。手に持っていた物をその場に置いて曲げていた腰を伸ばし
「「はーい。」」
と元気よく返事すればさし合わせていた様に茄子と並んで食堂へ向かって駆けていく。
「分かりました。って走るなよ!まだ仕事中の人もいるんだからな。」
すみません、お先に失礼します。と言って一礼してから追いかけてくる唐瓜の気配を感じながら茄子に話しかける
「お昼ご飯、どうする?」
「んー。オレは決まってないなー。そもそも今日のメニューってなんだっけ?」
「あ、それもそっか。まーいいや、ビビッと来たの食べよう。」
そうやって話していれば二人の間に息を切らし唐瓜が走りこんできた。
「少しは俺を持つって考えになって、だな・・・」
「私オムライスか親子丼がいいな、卵食べたい気分!」
「だから話を聞けてくれよ。」
徐々に走る速度を落とせば庁舎の入り口で、おしゃべりを止めて汚れた裾を払ってから食堂へと歩を進める。
さて今日のお昼は誰と出会えるかな?
