第2章 寒月
side O
なんだよあいつ
なんなんだよ仁科
「くそっ…」
自販機の横に置いてあるゴミ箱を蹴ってみたけど、気分は晴れない。
あの後、すぐに教室を飛び出してみたけど、行き先なんてない。
しょうがなく新宿駅まで向かって、地下鉄に乗った。
窓から外を見ても何も見えない。
なんで…窓なんか付けてるんだろ…
ガラス窓付けてる分、車体の強度が落ちるじゃん
全部、鋼鉄で覆ってしまえばいいのに
そしたら…本来窓から見えるはずだった景色が…
見えないからって絶望しないのに
地元の駅に着いたら、とりあえず家に向かった。
この時間に帰ったら、鉢合わせしてしまうかもしれない。
でも…どこにも行く場所なんてなかった。
オートロックの鍵穴にカードキーを差し込むと、部屋のドアが解錠される音が聞こえた。
ゆっくりと玄関ドアを開いて中に入ると、黒いエナメルのヒールがきちんと揃えて置いてあった。
「チッ…」
やっぱり、鉢合わせだ。
こんなことなら、今日学校なんか行くんじゃなかった。
そのまま部屋で寝てればよかったんだ。
リビングから、派手な洋楽が流れているのが聞こえる。
「…また飲んでる…」