第1章 狐月
相葉先生とは…
実は赴任してきてからすぐ、仲良くなったっていうか…
一方的に、手下にされたっていうか…
あの人、すごくいい加減に仕事してるんだけど、とても人をよく見てて。
俺が新任式で緊張のあまりぶっ倒れそうになったとき、さりげにフォローに入ってもらえて、暫く保健室で休ませてもらったことがあった。
それから、相葉先生は遠慮なく俺にズバズバと物を言う。
だがそれが、後から考えると生徒へ接するヒントを含んでいたりするから、恐ろしい。
人のいい笑顔、柔らかな声のトーン。
どれを取っても、ニコニコしてるだけなら、いい人に見える。
だけど、後輩には何を言ってもいいと思っている節があり、俺は後輩認定されているようで…
「バカにされる、ね…」
そんなこと、十分にわかってる。
学年付きの年なんて、本当に右も左もわからなくて。
ただ受け持った英語の授業の単位をこなすのに必死だった。
次に、今の3年になる学年の副担になったは良いが、一部で深刻ないじめ問題を抱えていた。
なんとか今年度のクラス替えでそれは収まったようには思っているが…
生徒たちは、大人や教師の前では上手に嘘を付く。
俺もそうだったし、周りの友人達もそうだった。
大人と子供の間で、どっちの顔も使い分けていたんだ。
大人の事情なんか、知ったこっちゃなかったから。