第1章 意地悪悪魔さま
『血をあげる』
言っても聞かない朧の意識を奪うため。
わけわからなくなるまで乱れて貰うため。
ルシエルはただひたすらに。
朧を快楽に溺れさせていった。
だけど。
「……るぅに、血、あげるまで寝ない、も……っ」
頑なに唇を噛んで意識を保つ朧。
悲痛に顔を歪めて。
「いいから早く、寝ろって」
思い切りルシエルは朧の中へと己自身を、突き挿した。
「━━━━━━ひぃあ…っ」
一瞬息を呑んで、挿した途端にぎゅうぎゅうと締め付ける朧に。
ルシエルもまた、はち切れそうに膨らんだ自身の射精感に襲われた。
「……っ」
「るぅ……」
悪魔たちの、食料は血肉。
人を食らう、化け物だ。
朧と契約したあの日から3年、ルシエルは食事を取っていない。
朧の願いを叶えてやるつもりが、少しだけ、ままごとにつきやってやるつもりが。
ミイラとりがミイラになった。
純粋な朧に、惹かれていった。
朧の命を食らうなど、出来ない。
「お願い、ルゥ……っ、朧を、喰って………っ」
「…………っ」
血を、飲めば。
少しでも口に含んでしまえばきっと命が果てるまで貪り尽くすだろう。
空腹なんだ。
抑えなんか効くはずない。
だから。
「頼むから朧……っ、俺からお前を奪わないでくれないか……っ」
空腹なら我慢できる。
耐えられる。
だけど朧がいなくなるのは、耐えられない。
「ルゥ………っ」
朧に乞われるままに、唇を重ねて。
舌を絡めた。
「…………っ!!」
途端に広がったのは。
朧の、血の、味。
咄嗟に距離を取ろうとしても。
朧の両腕が首に絡み付いて離れない。
その間にも。
朧はルシエルの口の中へと自分の血液を流し込んでくるのだ。
「━━━━━━ーーー…っ、朧……っ!!」
ドクンっ
いくら力を込めても所詮人間の女。
悪魔であるルシエルの方が力は圧倒的だ。
そんなことすべてわかった上で。
それでも朧はルゥに血液を流し込みたかったのだ。
たとえそれがたった一滴、だとしても。