第1章 意地悪悪魔さま
「いいよ、ルゥ……」
朧の口の端から、血液が流れ出る。
血の、匂いに。
先ほど喉を通りすぎた久方ぶりの、血の味に。
クラクラする。
ドクン ドクン ドクン
「朧………」
「大丈夫、ルゥ、愛してる」
甘い、血の、匂い。
懐かしい味。
血液が、沸騰する。
血が、騒ぐ。
肉が、剥がれる。
理性がそぎおとされていく。
「━━━━━━ーー……っっ」
「ルゥ」
そっと。
朧の柔らかな掌がルシエルの頬へと触れた。
瞬間。
━━━━━━ダンっっ!!
て。
激しくぶつかる、大きな音。
ルシエルの掌と、テーブルがぶつかった音だ。
「…………え」
起き上がろうとする、朧の体ごと。
ルシエルは再度テーブルへと朧を押し倒した。
「俺を誰だと思ってる、朧」
うつむき加減に囁かれた、低い声。
「る、るう……?」
うつむき加減のルシエルの表情が見えなくて、朧の瞳が困惑に揺れる。
だって。
声が、怒りを含んでいる。
肩が、震えてる。
怒らせちゃったんだ。
「おこ、ったの?ルゥ」
「…………当たり前だ」
「え」