第1章 フー・アム・アイ
所詮もしもの世界だけれど。守りたいものを守るために距離を置いたことや、悪に堕ちたことや、あらゆる全てを裏切って見捨ててきたことが―――私の選択が正しかったのか否か、教えてほしい。目的は同じであるはずなのに手段は真反対なこの対となる彼を見ていれば、私は答えを得られるのかもしれない。多少の期待を込めた私の言葉に、彼は静かな目で私を見据える。
「それは、経験からくる助言か?」
皮肉のようにも聞こえるその言葉に、微笑んで返答を誤魔化す。
「…言われなくてもそうするつもりだ。守りたい時にそばに居られなくて守れませんでした・じゃ話にならねえだろ」
―――脳裏を過ったのは、乱菊がほとんどの魂魄を奪われ、横たわっていたあの日の姿。少し離れただけだったのに、その少しの時間が、取り返しのつかないことになってしまった。守りたい時に、そばに居られなかった。彼の言葉は、そのような意図がないのは明白なのに、容赦なく私の心を抉る。
「仰る通りやわ。…キミは、そのままでおってな」
真っすぐな心を失わず、真っ当な道を歩んで、大切な人を守り切ってみせてほしい。私の選んだ道が正しかったのか否か。その答えを示してくれるのは、どうかこの彼であってほしいと、心から望んだ。
自分のことをどうするつもりなの
(月光の下、私と彼は刃を交える。雛森チャンを傷つけられ、怒りながらもその背に庇いながら戦う彼と。乱菊の心を傷つけ、笑いながら敵対する私と。どっちが正解かなんてわからないけれど、どっちがあるべき正しい姿であるかなんて。火を見るよりも、明らかで。私は、)