第29章 君がいてくれたからだ
東仙に左腕を斬り落とされそうだったところを庇われた。藍染の怒りから護られた。相変わらず犬扱いされるが、不快にはならなかった。何故かはわからない。ただ、それ以来やたらと構ってくるあいつに悪い気はしなかった。あいつとの暇潰しはそれなりに楽しかった、ように思う。相変わらずバカのひとつ覚えみたいにニコニコ笑ってやがるとは思っていたが、その微笑に時折陰があることには気付けるようになっていた。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。眼が覚めると、少し離れた場所で、ヤミーと死神が戦っている気配を感じた。完治とはいかないが俺の傷はほとんど治っていた。光の膜は既に消えている。仄かに、あいつの霊圧の名残を感じる。
「……だから恐ェんだよ、テメェと関わるのは」
破面達が自分を避けると嘆いていたあいつ。避けるだろうよ。藍染のお気に入りだからというのも理由の一つだろうが、根幹はそうではなくて。俺ら破面は大抵獣じみた嗅覚を持っているから、本能が理解するのだ---あいつがとことん甘くて、お人好しだと。そこに触れてしまうと、それを与えられてしまうと、抜け出せなくなると俺たち破面は察知していたから、だから。
「…ザマァねえな」
嗤う。それに触れてしまった結果が、今の俺なのだと。
立ち上がる。虚圏に藍染やあいつの霊圧を感じない。恐らく現世へ進攻したのだろう。ヤミーの怒りが、声が、ここまで聞こえてくる。うるせぇ奴だと呟き、ごちゃごちゃ言っている黒崎達に近付いて、そうして。
「---連れてってやるよ」
「グリムジョー……!」
「現世に行きてェんだろ?黒膣開けてやるって言ってんだよ」
「グリムジョー…テメェ…自分が何言ってるか分かってんだろうなァ!?」
ヤミーが怒る。攻撃されるが、それを軽く避ける。
「…十刃」
「あァ?」
俺の隣に現れた死神に覚えはない。刀を抜くも、そいつに攻撃の意思は見えなかった。
「…そうか。貴様も愛美に救われたか」
「………癪だがな」
その死神は何を思ってか目を瞑る。そして、目を開いて、黒崎に行けと言った。
「あの十刃は我等が引き付ける。その隙に行け、現世へ」
言うだけ言って、ヤミーへと向かっていった死神。黒膣を開き、黒崎を呼ぶ。ヤミーの罵倒を聞きながら、それを閉じた。