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徒花まみれの心臓【BLEACH】

第14章 欠落貴女を壊すのは






「……“   ”………、」


私の腕の中で眠る愛美が彼の名を零した。愛美の白銀の髪を撫でていた手が、一瞬だけ止まる。が、すぐにまた髪に指を絡めて弄ぶ。


「…彼の夢を見ているのかい?」


深く眠っている今のこの子に訊いても返事が返ってこないことなど解っているのに、そう訊かずにはいられない。いつからか全てを棄ててしまったというこの子は、確かに今までの甘さが見えなくなったように思う。巧妙に隠しているだけでその甘さが無くなった訳ではないということを、私は知っているけれど。


市丸愛美という死神を簡単に表現するなれば……私を殺めようと企む美しい白蛇、という表現が正しいのだろうか。百余年前から今か今かと息を潜め、一瞬の隙さえ逃さない鋭い瞳で私を見据え。しかしその瞳は例えようのない慈愛に満ちている。本当に矛盾の多い子だ―――私のことを激しく憎むその実、私を真に理解しようとするのだから。そこが平子真子とは異なる点だ。彼は私を警戒し、そして近寄らせず、近寄らなかった。しかしこの子は、私を憎みながらも拒まない。


(この子を、手放したくない)


彼女に目をつけた最初の理由は、ただ単純に実力だった。真央霊術院をたった1年で卒業した天才…、今で云う日番谷冬獅郎のように“神童”と謳われ恐れられた子供。それが、市丸愛美。その実力は申し分なく、とりわけ鬼道の才能に関してはこの私に勝るであろう才能がある。幼いその瞳の奥には静かなる絶望が覗き、そしてそれを他人に悟らせまいと浮かべられる、儚い微笑。単純に気に入ったのだ。


そして、この優しい子が、どのように私を殺めようとするのか。憎しみだけで剣を振る姿を見てみたい、この微笑を壊してみたいと、思ったのだ。


「藍染隊長、あんま無理しはらんで下さいね。ここ最近寝てませんやろ」


私の本性を知る人は数えるほどしかいない。その上で労りの言葉をかけられたのは、他の死神と同じ様に扱われたのは、…初めてだった。もしかしたらあの時から私はこの子の存在を意識し始めたのかもしれない。それほどまでに私に強い衝撃を与えたのだ。心配されたということに、不思議と嫌な気はしなかった。おかしな話だが、私を憎むこの子がその時は本当に何の打算もなく私を案じていることが分かったからだ。―――私のことを理解しようとする存在など、後にも先にも愛美だけだろう。


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