第13章 白銀がひらり、舞い踊る
「白哉クン」
いつも鬱陶しいほど私に纏わり付き、喰えぬ微笑を浮かべていた愛美。嫌いだった。自由奔放に振る舞い、単純そうで喰えぬあの女が。いつからだろう、互いが隣にいることが当たり前になってしまったのは。私があやつのそばにいて、あやつが私のそばにいて………それを心地好いと感じ始めたのはいつからだったのだろう。
「朽木隊長、十番隊副隊長の松本乱菊です。日番谷隊長より六番隊宛の書類を持って参りました」
「………………入れ」
「失礼します」
隊首室に入って書類を置く松本副官を横目に、しかし筆を運ぶ手は止めず。先程まで愛美のことを考えていたからか、その幼馴染みである松本副官が書類を届けに来たということに眉が寄った。
「朽木隊長」
「…………」
「……あいつを、見捨てないでやってください」
失礼しましたと言って一礼し、松本副官が隊首室を出て行った。
「……………………見捨てる、か」
筆を置く。私が愛美を見捨てる?………馬鹿馬鹿しい。見捨てるも何も、先に離れていったのはあやつの方だ。―――捨てられたのは、私の方だ。
「六番隊長サン」
あやつは私を名前で呼ばなくなった。名前で呼ぶのは、自身の副官と幼馴染みである松本副官だけ。変わったのは名前を呼ばなくなったことだけではない。ただでさえすべてが曖昧で喰えぬ奴だったのに、更に喰えぬ奴になってしまった。他人との間に絶対的な壁を作り、その境界線を越えようとした者を容赦なく突き落とし。誰をも遠ざけ、近づくことを許さない、冷たい奴になってしまった。唯一変わらぬのは、あの微笑だけとなってしまったのだ。
「…あの時感じた違和感を問い質していれば、こうはならなかったのやもしれぬ」
さいなら、白哉クン---あの日の最後の言葉。その表情は見えなかった。さようならの言い方に違和感を覚えてはいた。しかし何も言わなかった。
「愛美………兄は…本当に、」
昔から、私の心を掻き乱してくれる。
「イヅル~、ちょお休憩しましょて」
「この書類が終わるまでは駄目です」
「………………イヅル~…」
「……そんな目をしても駄目なものは駄目ですよ、隊長」
「……………………」
「………っああもう分かりました!」