第8章 愛に着地することは難しい
すぐに感情的になって、取り乱して、色んな人に迷惑をかけて。私は仮にも隊長なのに……情けないな、本当。こんなんじゃ、いつまで経っても平子隊長に追い付けない。―――遠い。平子隊長、貴方がとても遠くて…眩しい。
「……以前から兄に訊きたいと思っていたことがある」
「…なんですの?」
「兄は何故隊長になった」
………その問いには、一言で答えられる。だけど私はここでも意味のない嘘をつく。
「考えたことあらへんな、そんなこと。覚悟だとか責任だとか、そんな大層なんはなーんにも考えてへんよ。藍染隊長に推薦してもろて、隊首試験受けて合格できた。せやから隊長んなった、ただそれだけや」
「…………」
「他ん人らの様な立派な覚悟も、なんも持ち合わせおりまへん」
「…兄らならではの返答だな」
私が隊長になった理由。藍染隊長の計画を進めるためには私も隊長になった方が都合が良かった、総隊長の元へ頻繁に報告をするには隊長になった方が都合が良かった、ただそれだけ。強いて言うなら、平子隊長に少しでも近づきたかったから……なのかも、しれない。
「兄らしい。真偽を有耶無耶にするその言い回しも、全て」
「……、やめてくれます、照れますやん」
「褒めてなどおらぬ」
「ふふ、」
乱菊も白哉クンも、みんなみんな優しすぎるのではないだろうか。私はいつも喰えない微笑を浮かべて、いつも物事を曖昧にしている。普通は警戒心を持つはずだ。どんなに物腰が柔らかくても、曖昧にぼかし微笑んで隠すような人に信頼なんておけない。私なんて十分それに当て嵌まるのに、乱菊もイヅルも、…みんなが私を信頼する。信頼してくれている。
「白哉クンもつくづくお人好しやんね」
私―――“市丸愛美”という人物は君が一番嫌うであろうタイプの人間だろうに。それでもこうして一緒に居てくれる優しさには感謝してる。…その優しさが、私を苦しめるものだとしても。
愛に着地することは難しい
(どこにも着けず、浮遊する)
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京楽さんは極力関わりたくない人。