第52章 探り合いの戦
翌朝
ゆっくりと眼を覚ました。
信玄とあんな話を下からだろうか、
なかなか寝付けなかった昨夜。
着替えを済ませ、部屋を出た瑠璃に、
「起きたか?」
「謙信様、遅くなって申し訳ございません」
「気にするな。
どうせお前はする事もないだろうが」
ツンと澄まし顔だが、謙信が何か気遣っているのは分かっていた。
でなければ、部屋を出た所で鉢合うことなどないのだ。
「眠れなかったとは、意外と繊細だったのたな」
そう謙信が意地悪く言ってみても、
ニコニコと微笑んでいる瑠璃に謙信が居心地悪そうにして
「…お前の顔も見納めだからな」
と言った。
「見納めですか」
思いがけず寂しそうな瑠璃の声音。
「…ああ、今日夕刻には政宗が率いて援軍が戻ってくる予定だからな」
「政宗が帰ってきても、私はここに居ても良いんですよ?」
「帰れ」
「冷たい」
「なんとでも言え」
「冷たい、でも、本当は優しい」
フフッと笑う瑠璃を謙信が嫌そうに見た。