第51章 独りの行方
「悲しいではないのか」
「悲しい…?
まだ…何も終わってへん…負けてもない…
やから、悲しみはまだ先です」
(この女は、最後まで足掻くのか)
諦めもない、後ろも見ない、
先にある微かな光をも掴もうとする瑠璃の心を謙信はその瞳に見た。
「……大崎は我が領土を脅かすやもしれん。
我が軍を伊達に5千つけろ」
「…謙信様っ…」
「お前には戦う覚悟があると見た。
女のくせに無茶をする。
もう、寝ていろ」
抑揚のない声音でそう言って謙信は、
静かに部屋を出て行った。
その日のうちに兵の準備がなされ、
翌日 曙の頃には出立した。
「謙信様は行かないんですか」
「謙信の援軍を持って交渉するはずだ。
最上が賢ければ戦闘にはならないだろうからな」
幸村と信玄が話していた。
「斬り合いのない戦には興味ないもんなー」
幸村がカラカラと笑った。