第51章 独りの行方
信玄が労るような表情で、肩を摩るように抱く。
「よく無事だったね…辛かったろう」
「崖から投げ落とされて、川流れて来たって
…お前、良く命があったな…」
幸村は感心するやら呆れるやらだ。
「我が領土の境まで追ってきておったのか…」
振り落とされた川は越後方面に流れる川だったのだ。
タミに助けられて瑠璃が驚いたのは、その事だった。
此処まで来た経緯を簡潔に話したあと
瑠璃はもう一度頭を下げた。
「謙信様…どうか…形だけの援軍でも…」
「何の見返りもなく援軍を出せと?」
謙信の眼の色が変わった。
(見返り……)
「………」
項垂れる瑠璃だったが、
「……私を人質に……」
「お前、か……信長の姫を寄越せと言ったらどうする」
「⁉︎謙信?」
「お前が人質ではなんの利もない。
信長の姫なら、大いに使い用がある」
「…この度の戦は…信長様とは関係…ありま…」
「関係あるかないかは、関係ない。
此方に利があるかないかだけだ」
戦国の世にあって、謙信の言う事はもっともだ。
けれど、
瑠璃は謙信はそれだけではなく、
助けてくれると思っていた。だからこそ、無理を押して此処まで来た。
頼れる人は此処にしかいないと思って。
しかし……