第49章 後方の敵
尻餅をついた私の前に立ちはだかって刀を構えている男。
特別な武装はしていない。
見窄らしい成りで刀をもっている。
鼻から口元は布切れで覆っていて目元しかわらないが、澱んだ瞳で私を見ている。
私はそれを見上げながら対峙していた。
(どうして…)
ゴクリと唾を飲む。
「私を…殺しても、生け捕っても…無意味です…」
なんとかそう言った。
「それは俺は知らない。いや、俺にはどうでも良い」
瑠璃に切っ尖を向けてはいるが、瑠璃には興味がなさそうに見える。
屈強そうだが敵方の武将でもなさそうだ。
そんな男が
「お前が伊達の弱味、足枷だろう?
悪いが、お前を連れて行く。
刃向かうな、喚くな、暴れるな」
刀の切っ尖を鼻先に再び突き出され、
喉元にギラッと向けられた。
その刀が本物で斬られれば死ぬと言うことは認識していても、私は実感がない。
なぜなら実際、切られたことがないのだから。
明け7つの刻、
伊達軍は最上義光と同盟を結んでいる大崎義隆との闘いに向けて出立した。
陣を構えた場所から少し先の平地で対する為だ。