第45章 兆報
袴姿の瑠璃が政宗に馬を並べる。
その顔はなぜか綻んで見える。
「どうした?」
「また、一緒に旅出来るなー、と思って」
そう言うと瑠璃はパッと笑顔になる。
が、当の政宗は硬い表情を崩さない。
「そうだな。
まぁ……今回はあんまり嬉しくない旅だがな」
「せっかくですから、楽しめるだけ楽しんで旅しましよう」
政宗の急く気持ちを慰めたくて、瑠璃はあえて、そう言って笑ったのだった。
そんな瑠璃の気持ちには気付かなかったものの、
「…そう、だな」
政宗は憂いの中に、笑顔を見せた。
「駆けるぞっ」
急くのは気持ちばかり。
それをなんとかしたくて政宗は馬の銅に蹴りをいれる。
「政宗っ、待って!
初っ端から飛ばしすぎは良くないですよっ」
「馬鹿だなぁ!
初っ端だから飛ばすんだろっ」
「途中にへばっちゃうよ!」
「俺は平気だ」
「私は置いていくつもりやの⁉︎
待ってってばぁ」
声を張り上げながら瑠璃が政宗を追いかける。
そんな、帰郷の旅の始まり。
帰れば戦の足音がすぐそこまでやってくる。