第44章 足音
「で、瑠璃……」
「はい、何でしょうか」
姿勢をただしたまま、麗凛な声音で秀吉に返事をする瑠璃に、秀吉は何となく、申し訳なさそうな表情をして、言いにくそうにしながら続ける。
「瑠璃、昼間、ヤツと……」
「元就様ですか?」
「ぁぁ…ヤツと、姦通して…」
「姦通?」
驚いたのか瑠璃の柳眉が上がる。
「姦通、と言うか…」
「秀吉、苛々する、ハッキリ言え。
接吻していただろう、と」
「のっ、信長様っ////」
「…あれは、していたのではなく、されたんです。
合意でも同意でもありませんよ」
秀吉の照れ具合と対照的に
瑠璃がいささか憤慨気味、忌々し気な口調になる。
「突然、不意打ちで口付けられて不本意ですっ」
「告知されてたなら良かったのか?」
「信長様…良いわけありません。
もっと駄目じゃないですか」
呆れた眼で信長を見る。
「そんな眼で見るでない。冗談に決まっておる。そうでなくても、政宗に知られたらタダでは済まん状況だからな ふふふ」
「笑い事ッ!」
瑠璃が信長を叱責する。
「瑠璃っ」
叱責した瑠璃を秀吉が叱責した。