第40章 政宗、誕生日の噺ー前ー
手元でパチパチと音を立てている。
小さな火が闇黒に模様を浮かばせる。
「お前の時代では花火は手に持って楽しむのか」
「鑑賞するには打ち上げ花火も皆で楽しみますが、お金も設備も大変ですので、家族や友人と遊ぶならこれですね」
と言うものの、瑠璃がこうやって花火を楽しんだ経験は、両手に数えられる程しかなかった。
花火をフワフワと動かして光の残像を作り
「星〜、雲〜、富士山〜」と笑う瑠璃に、
「しょーもねぇなぁ」
と政宗が苦笑しながら付き合うのは、
瑠璃が一生懸命に笑顔を作り出していることに気付いていたから。
(こんな事出来る家じゃないくせに)
陽が落ちて辺りが闇に包まれた頃、
燭台を持って縁側に出た2人。
「政宗に誕生日のお祝いの品を贈りますね。
政宗にも初めての経験を用意しました」
ワクワクした期待に瑠璃の声が弾んでいるのが分かって、政宗は顔を綻ばせた。
(自分で準備したくせにな ククク)