第37章 憎悪の結末
そんな瑠璃の左頬に政宗はそっと手を添える。
そして、スルッと指先を滑らせると顎を捉えた。
「ん……」
ちゅっ…ちゅ……
「…ハッ…まさっ……っん…」
チュッ、チュッ…
啄まれ瑠璃は言葉が紡げない。
わざと何も言わせないようにして、絆してゆく。
(瑠璃…瑠璃っ。
お前は何を思う?)
知りたくてたまらない。
身体ではなく、心の中が暴ける何かがあればいいのに、と悔しく思う。
はぁ……
唇が離れ、吐息が溢れて、
潤んだ銀鼠色の瞳が恨めしそうに政宗を見る。
「教えてくれよ。
言わないなら、またその口塞ぐぞ」
ギラッと睨みつける。
観念したのか息を吐くと
「….政宗がー…他の人を優先するのも、
隣に並べるのも、全部イヤ」
顔を背け、恥ずかしげに、悔しそうに吐露した。
「私のコトだけ考えてれば良いのにっ」
詰問しておきながら、
普段ならなかなか見る事の出来ない瑠璃の様子に、
政宗はあんぐりと口と眼を開いた。
そして、
実はこんなに想われていたんだな、
と思うと苛立った殺気が凪いでゆく。
政宗は
『俺はいつもお前のコト考えてる』と言おうとして、やめた。
(可愛い)
からだ。
瑠璃がちょっと怒った口調だったのは照れ隠し。
(素直なんだか、素直じゃないんだか…)
政宗はフッと笑うと立ち上がる。
「政宗?」
「そんな顔すんなよ。
明日、迎えに来る」
さっきまでの尖った気が嘘みたいに、
爽やかな様子で立ち去った。
(そんな顔…私どんな顔してた?)
瑠璃は自分の顔をペタペタと触った。
(明日…)
藤隆姫が帰る。
政宗が迎えに来る。
なんだかとてもホッとした。
色々心が安まらない日々だった。
その日瑠璃は久しぶりにぐっすり眠った。
〈枯れススキ 夜風に揺れる 音ききて
恋やぶれ 君 泣きてねむれぬ〉