第5章 光秀と参謀
独り伊達御殿の渡り殿の欄干に腰掛けて、
夜が来るの感じる。
日中薄い雲の霞ががっていた。
「朧月夜か…明日は雨、降るんかな…」
空には三日月。
「笑って煙りに巻く光秀様みたいな月ね…」
上を向いて大きく緩い弧を描いている。
瑠璃は独り呟いて笑う。
菜の花畠(ばたけ)に 入り日薄れ、
見わたす山の端(は) 霞ふかし。
春風そよふく 空を見れば、
夕月(ゆうづき)かかりて にほひ淡し。
里わの火影(ほかげ)も、 森の色も、
田中の小路(こみち)を たどる人も、
蛙(かわず)のなくねも、 鐘の音も、
さながら霞(かす)める 朧月夜。
〈『朧月夜』作詞/高野辰之
作曲/岡野貞一〉
懐かしい。
「お前の時代の唄か?綺麗な旋律だ」
「光秀様…」
まさか光秀本人が現れるとは思っていなくて、瑠璃は驚いた。