第30章 奥州からの一行
「政宗…達筆のくせに何故、文くらいかえしてやらなんだ?くくく」
(そんな事っ)
用もない、好意もない、そんな相手にわざわざ文を送る政宗ではない。
そんな気を持たせるような事をするのは秀吉くらいだ。
信長とて同じなのに、政宗にそう言うのはただの嫌がらせ。
「…はっ…それはっ…」
政宗は頭を下げつつ言葉を濁し、逃げた。
(ここで、断りの文を何度も送ったとは言えねぇし)
政宗は苦々しい思いを胸にしまっていた。
整然と清秀とした様子で後方に正座している瑠璃。
不快感も悲嘆感も見ては取れない。
(瑠璃さん、感情を読ませてくれないからなぁ…でも…)
上座の美弥が心配そうな表情で見ていた。
(瑠璃さん、平気じゃないと思うんだけど…)