第29章 子虎と文
「照月ぅ〜‼︎」
二"ャオ"ーッ
(虎の子を抱きしめて嘆いてる?)
需要な文がこの有様なら仕方のない事だ、と瑠璃は政宗に同情したが、
そんな瑠璃の耳に
「良くやったぞ!」
幻聴と耳紛う言葉。
(え?)
「でかしたっっ」
聞き間違いでも幻聴でもない、歓喜の言葉。
(喜んでる?何で?)
二"ャ…二"ャオゥ…ニャゥーーゥ
政宗は嫌がる照月をきつく抱きしめ、まだ感極まっている。
ニャッ、ニ“ャオ
「…どう言う事でしょうか…」
「さぁ…私にもさっぱり…」
お夕と瑠璃は政宗の行動の真意が理解できなくて、眼をパチクリさせながら、
首を傾げ、1人と1匹を見た。
「政宗様、本当に良いのですか?」
「いくら俺でも大切な文は出しっぱなしにはしないぞ。
お夕、気にするな。照月もな」
まだ心配そうなお夕に、政宗は上機嫌でそう言って笑った。
実はこのゴミになった文はみな、政宗への縁談の文だった。
政宗は、その文がどうにかなれば…と思っていた故、照月に破られて上機嫌だったと言うわけだ。
しかし、文が破れても、何処かにか紛失しても、文が届いた事実も内容も変わるわけではなかった。