第29章 子虎と文
政宗は文を広げて突っ伏していた。
文机の上にも下にもたくさんの文が散らばっている。
突っ伏している政宗の軀のの下に下敷きになっているのは、政宗が何時ぞや『嫌な予感がする)と怯えていた文。
大條実頼(おおえださねより)からの物だった。
(嘘だろ〜…)
頭を抱えため息を吐く。
そこへ「政宗、参りましょう」
いつも通りに小姓姿の瑠璃が入ってきた。
「⁉︎ どうしたんですか、コレ」
散舌している文を見て瑠璃が唖然としている。
「ちょ…ちょっと、な……もうそんな刻限か」
机の上の文だけは、何気無しに畳んで机に端に整えると、ゆらっと立ち上がった。
「片付けなくても?」
「いい、捨てても構わない文だ。
いっそ、どっかに吹っ飛んでって失くなればいい」
投げやりな口調でそう言うと、瑠璃を押し出す様にして部屋をでた。
その後、この文達は部屋に忍び込んだ照月の玩具になり、バリバリのズタズタに破られ、噛みちぎられ、本当にゴミになっているのを、帰宅して2人は目にする事になる。