第28章 狐の残謀と逃げる兎
明朝、3人は安土城に戻っていた。
まだ、闇が残る早暁。
太陽はまだ山影に淡い光だけを見せ、
周囲は白々とした雰囲気だけ朝を見せる刻限。
「お帰りなさいませ!何事もありませんでしたか?」
秀吉が待っていた様に出迎える。
「コイツの格好を見て、何事もなかった様に見えるのか⁉︎」
「やはり…ありましたか…
こちらも報告がございます」
「…そうでしたか、大変でしたね」
「それで瑠璃はそんなボロボロなんだ」
政宗と信長が皆殺しにした訳では無。
将軍の息のかかった者が残っているのは確かな為3人は京に留まらなかった。
逃げた足で夜も駆けて、戻って来た。
「何はともあれ、無事で良かったね」
呆れたような眼で瑠璃を見て家康は、
一応、そう言った。
そして、
「怪我も無さそうだし」
付け加えて、優しい瞳でちょっと笑った。
(早く帰って眠りたい…)
まだまだ、続いている話を半分に聞いて、
瑠璃は欠伸を噛み殺した。