第28章 狐の残謀と逃げる兎
「政宗、短刀位は持っておるだろうな」
「もちろんです。
が、信長様は…」
「俺はコレがある」
政宗の眼の前にシャランと音をたてて簪がかざされる。
「それは、瑠璃が着けていた簪…」
「これはただの簪ではない」
シュッと軽い音がして、簪の芯が落ちた。
「隠刀⁉︎」
細くても鋭い両刃。
「暗殺用だろう。よく切れそうだ」
信長が左手に鉄扇、右手に簪を持ち悦笑した。
(ギュウギュウでキツキツや〜)
瑠璃は子供のような感想を持ちながら、
板の隙間を通過しようと半身の身体を捻る。
土に草履が滑ってなかなか通れない。
(早う、早うっ)